1960年に京都・岡崎地域に誕生、以来およそ半世紀にわたり京都の“文化の殿堂” として親しまれてきた京都会館が2016年1月10日(日)、ロームシアター京都としてリニューアルオープンする。老朽化にともない京都市が再整備を進めてきた後、11年9月、京都市に本社を置きこれまでも音楽文化振興のための支援を続けてきたローム株式会社が50年間にわたるネーミングライツを取得した。ロームシアター京都は、国内外の大規模公演が可能な約2000席のメインホール、舞台と客席の距離が近く一体感が得られる約700席のサウスホール、リハーサルのほか、仮設客席により200人規模の小劇場にも適したノースホールを備えた多目的ホールとして新たな一歩を踏み出す。
オペラなど総合舞台芸術に対応
ロームシアター京都は、地上6階、地下2階建て。前川國男のモダニズム建築の傑作である京都会館の建物価値を継承し、美術館や動物園などを有する岡崎地域の景観とも調和しながら、抜本的な機能改善が求められる旧第一ホールは全面的に建て替え、旧第二ホールは躯体の基礎を残しつつ、耐震強化やバリアフリー化、舞台機能等の充実を図った。中心となるメインホールは、4層バルコニー構造で2005席(オーケストラピット使用時1833席)を有する、大ホール。収納型音響反射板の設置によるクラシックコンサートの他、オペラなどの総合舞台芸術公演に対応できるよう、舞台の奥行や高さを確保した。
サウスホールは、収納型の音響反射板や組立可能な舞台床を採用。客席中通路より前部を舞台面として使用可能にするなど、表現の自由度が高い空間。
ノースホールはメインホールの地下に位置し、メインホールやサウスホールのリハーサル室として、また、仮設客席を設けることで小ホールとしても利用できる。
カフェ、書店を併設した開かれた空間
二条通に面した「パークプラザ」には終演後も営業するレストランのほか、ブック&カフェを併設。「ローム・スクエア」と名付けられた、京都市美術館別館とパークプラザの間の広場は、野外イベントが可能な憩いの場として活用される。また二条通から冷泉通まで通り抜けが可能な共通ロビー「プロムナード」には、総合案内やチケット販売のほか、岡崎地域を中心とした文化芸術に関する情報案内も行う。
プロデュース・オペラ《フィデリオ》で始まるオープニング事業
オープニング事業でまず注目されるのは、開館記念公演・記念式典(1/10)の翌日に上演される、ロームシアター京都プロデュース・オペラ《フィデリオ》(セミステージ形式、1/11)。京都を拠点に活動する劇団「地点」の演出家・三浦基と指揮者・下野竜也のタッグで開館を祝う。演奏は京都市交響楽団(京響)、京響コーラス、京都市少年合唱団。劇団「地点」の俳優が語りを務め、木下美穂子、小森輝彦ら東京二期会の歌手陣に、関西を代表するソプラノの石橋栄実が華を添える。(ぶらあぼ2015.12月号P.36参照)
本格的なオペラを上演
2月には、小澤征爾音楽塾がJ.シュトラウスⅡの喜歌劇《こうもり》を上演する(2/18,2/20)。主役のアイゼンシュタイン役はウィーン国立歌劇場やザルツブルク音楽祭など第一線で活躍するアドリアン・エレート。エレートは11、15年に新国立劇場でも同役を歌い高い評価を得ているから期待は大きい。また、台詞役のフロッシュに俳優の笹野高史を起用することでも話題だ。オットー・シェンクとメトロポリタン歌劇場のオリジナル・プロダクションを使った重厚で華麗な舞台となる。指揮は音楽監督の小澤征爾と、ドイツ・ハノーファー州立歌劇場専属指揮者の村上寿昭が振り分ける(P.34参照)。
本格的なオペラ上演を可能とした同劇場の機能をフルに発揮しそうなのが、10月のマリインスキー・オペラ《エフゲニー・オネーギン》(10/8)。ロシアを代表するオペラハウスであるマリインスキー劇場の初めての京都公演は、同劇場音楽監督・総裁のワレリー・ゲルギエフが「《オネーギン》の理想的なプロダクション」と自負する自信作を自らの指揮で。14年プレミエのアレクセイ・ステパニュクによる演出は、“叙情的情景”と呼ばれる本作品を美しく描き出し、いくつもの《オネーギン》が舞台に掛かるロシアにあって「これだけはいつも満席」という人気作だ。
京都に根ざした多彩な企画
16年に創立60周年を迎える京響は、京響クロスオーバー(4/29)でエンターテインメントオーケストラとしても始動する。本公演は、世界最高峰の自然ドキュメンタリー番組『フローズンプラネット(NHKとBBCの大型国際共同制作シリーズ)』とのコラボレーションで、大スクリーンに映し出された壮大な映像とフルオーケストラの両方が楽しめる。
7月に開催される「東京音大・京都芸大による吹奏楽の祭典 in KYOTO!」(7/10)は、精緻なアンサンブルに彩られた雄大な響きに、愛好家のみならず吹奏楽関係者からも称賛の声が湧き上がっている京都市立芸術大学の吹奏楽が、13年から大学間交流の取り組みの一つとして、吹奏楽交流演奏会を開催している東京音楽大学をゲストに招いてのブラスの祭典。指揮は京響常任指揮者の広上淳一ら。
9月にはサウスホールで、京都で生まれ育った気鋭の若手ピアニスト・寒川晶子によるコンサートが開かれる(9/24)。C(ド)音のみに特殊調律したピアノを使用した演奏は、独自の視点でプログラムを選曲・企画する寒川ならではの企画。
このほか、公益財団法人ローム ミュージック ファンデーションが支援し、新国立劇場が平成10年度から毎年、通常シーズン公演と全く同一のレパートリー・プロダクションを提供し続けている「新国立劇場 高校生のためのオペラ鑑賞教室 関西公演」が京都に会場を移して、10月に開催される(10/26,10/28)。
文:編集部
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年1月号から)
■オープニング事業の主なラインナップ●ロームシアター京都プロデュース・オペラ
《フィデリオ》(セミステージ形式)
2016.1/11(月・祝)17:00 メインホール
指揮:下野竜也 演出:三浦基 管弦楽:京都市交響楽団
合唱:京響コーラス 京都市少年合唱団●ロシア国立ワガノワ・バレエ・アカデミー『くるみ割り人形』
2016.1/30(土)17:00 メインホール
管弦楽:京都市交響楽団 合唱:京都市少年合唱団●小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトⅩⅣ
J.シュトラウスⅡ 喜歌劇《こうもり》全3幕(原語上演/字幕付)
2016.2/18(木)18:30 、2/20(土)15:00 メインホール
音楽監督・指揮:小澤征爾 指揮:村上寿昭
演出:デイヴィッド・ニース 管弦楽:小澤征爾音楽塾オーケストラ
2015.12/19(土)発売●KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2016 SPRING
2016.3/5(土)〜3/27(日) サウスホール、ノースホール、他●京響クロスオーバー
2016.4/29(金・祝)15:00 メインホール
指揮:ダグラス・ボストック 管弦楽:京都市交響楽団●東京音大・京都芸大による吹奏楽の祭典 in KYOTO!
2016.7/10(日) メインホール
指揮:広上淳一 増井信貴
吹奏楽:京都市立芸術大学 東京音楽大学●ロームシアター京都セレクション(仮称)
2016.9/24(土) サウスホール ピアノ:寒川晶子 他●マリインスキー・オペラ《エフゲニー・オネーギン》
2016.10/8(土) メインホール
指揮:ワレリー・ゲルギエフ 演出:アレクセイ・ステパニュク
管弦楽:マリインスキー歌劇場管弦楽団
2016.1/23(土)発売●新国立劇場 高校生のためのオペラ鑑賞教室 関西公演
《フィガロの結婚》全4幕 (イタリア語上演/字幕付)
2016.10/26(水)、10/28(金)各日13:00 メインホール
指揮:広上淳一
演出:アンドレアス・ホモキ
合唱:新国立劇場合唱団 管弦楽:京都市交響楽団●公益財団法人京都市芸術文化協会創立35周年記念事業
深川秀夫版「白鳥の湖」全幕公演
2016.11/20(日)15:00 メインホール
演出・振付:深川秀夫 指揮:園田隆一郎
管弦楽:京都市交響楽団
各公演の詳細は右記公式サイトを参照ください。(一部完売公演あり)
問:ロームシアター京都075-771-6051
http://rohmtheatrekyoto.jp
※(ぶらあぼONLINE https://ebravo.jp/archives/23376 より転載)