ロームシアター京都、2018年度自主事業ラインアップ

 2016年1月にオープンしたロームシアター京都が、3年目のシーズンを迎え、5月23日、新シーズンの自主事業がスタートした。去る、3月8日には主催事業アーティストらが登壇し、2018年度自主事業ラインアップ説明会が行われた。登壇者は以下の通り。笠井叡(舞踏家)、木ノ下裕一(木ノ下歌舞伎主宰)、影山裕樹(編集者、ライター)、遠山昇司(映画監督/プロデューサー)、きたまり(振付家、ダンサー)、柴田智靖(京都市交響楽団 シニアマネージャー代行兼チーフマネージャー)、橋本裕介(ロームシアター京都/KYOTO EXPERIMENT プログラム・ディレクター)。
(2018.3.8 ロームシアター京都 Photo:M.Terashi/TokyoMDE)

 2018年度自主事業にあたってロームシアター京都/KYOTO EXPERIMENT プログラム・ディレクターの橋本裕介はコンセプトについて次のように説明した。
「オープン時に掲げた4つの柱、すなわち『創造』『育成』『交流』『生活』はもちろんのこと、『私たちが共有する時間』をキャッチフレーズに、レパートリーの創造をさらに推し進めていく。また、諸外国の劇場作品を紹介することで、劇場がどのように作品を創造し未来に残せるか、を共有したい。地域との連携でも新たな視点を取り込みたい」

左より)橋本裕介(ロームシアター京都/KYOTO EXPERIMENT プログラム・ディレクター)、柴田智靖(京都市交響楽団 シニアマネージャー代行兼チーフマネージャー)、影山裕樹(編集者、ライター)、遠山昇司(映画監督/プロデューサー)、木ノ下裕一(木ノ下歌舞伎主宰)、笠井叡(舞踏家)、きたまり(振付家、ダンサー)

 以下、自主事業から主な作品をコメントとともに紹介する。

■笠井叡振付『高丘親王航海記』
2019年1月11日(金)〜 1月12日(土)サウスホール
澁澤龍彦の遺作「高丘親王航海記」を、振付家・笠井叡が舞踊作品として創作し、ロームシアター京都で世界初演する。舞踏の創生期から活躍する笠井叡が、盟友の澁澤龍彦の原作をもって、黒田育世、近藤良平、寺田みさこといった実力、人気共にコンテンポラリーダンスを代表するダンサーを迎えての大作に挑む。

笠井叡
「ずいぶん前から澁澤龍彦の有名な文学作品を舞踏作品にしたいと考えていました。何十年も前から温め続けてきた作品。いつかできればいいなあ、と思い続けていましたが、今回上演できることになり、個人的には感慨深い。澁澤さんとはサド裁判のころ土方巽さんを通じて出会った。澁澤さんは、天使のようで悪魔のよう、そして、純粋で恐れを知らない人物。文学心というよりも、彼の存在自体に惹かれた。舞台で上演することで、舞台に影響をもち、生き続けている存在として、幻想の澁澤龍彦が浮かび上がってくればいいなあと思っています」

■作・演出 岡田利規
ミュンヘン・カンマーシュピーレ『NŌ THEATER』

2018年7月6日(金)~ 7月8日(日)サウスホール
ドイツ有数の公立劇場ミュンヘン・カンマーシュピーレにて、日本人演出家としては初めて3シーズンにわたるレパートリー作品の演出を務めた岡田利規(チェルフィッチュ主宰)による、2017年2月に発表された作品がついにロームシアター京都に登場する。日本国内での上演は京都公演のみとなる。本作で岡田が取り上げるのは、日本最古の舞台芸術「能」。その様式を用いて、資本主義に飲み込まれている現代日本の姿を描き出す。音楽は、即興演奏を行う現代音楽家・内橋和久が担当。

岡田利規
「演劇をやるものとして能に惹かれているのは、演劇のスタイル、物語の構造、パターンが演劇的によくできていること。てっきり日本でやるものと思っていたところ、ミュンヘンの劇場とやることになりました。演劇のスタイルとして強いなと思うのは、主人公が幽霊だということ。幽霊ということは成仏していない。未練だったり満たされないものをもちながら死んでしまった、それが主人公。死んでいるけれども幽霊という存在で舞台に存在し、舞台上で話すことができる。考えてみればみるほどすごい。満たされないのをかかえながら死んだ人はたくさんいるけれども、その人が死んでしまったのは社会や時代に原因がある。満たされなさを描くことで、社会や時代を告発することができる。そこに興味がありました。扱っている内容は日本を題材にしているので、日本の観客のみなさんが、自分たちの社会として見ることができる。そして、ドイツの役者がドイツ語でやることで、何か面白い経験になるのではないか」

■京都市交響楽団
京都 発見!クラシック Vol.8

2018年5月31日(木)メインホール
■平成30年度
新国立劇場 高校生のためのオペラ鑑賞教室・関西公演
「魔笛」全2幕

2018年10月29日(月)、31日(水)メインホール
■京響クロスオーバー 「バレエ×オーケストラ」
2019年1月6日(日)メインホール

柴田智靖(京都市交響楽団 シニアマネージャー代行兼チーフマネージャー)
「京都市交響楽団がロームシアター京都で何ができるかを考えた。コンサートホールでない劇場で、総合芸術であるとか、新しい形を模索しながらやってきました。『京都 発見!クラシック』は、トークと音楽でクラシック音楽の裾野を拡げたいという考えで始めたものです。
 『平成30年度 新国立劇場 高校生のためのオペラ鑑賞教室・関西公演』は、新国立劇場の世界的に有数の舞台が見られる。しかも高校生を対象に、安価で本物を見てもらう機会を作れるほか、京都市交響楽団としては総合芸術に寄与できる。
 『京響クロスオーバー』はロームシアター京都開館以来取り組んでいるもので、1年目はドキュメンタリー映画とオーケストラ、2年目はミュージカルとオーケストラ、3年目の今回はバレエとオーケストラ。首藤康之さんにはOKAZAKI LOOPSで出演いただいたが、そのときはオーケストラとの共演がかなわなかった。ぜひいっしょに何かやりましょうねということで、ようやく実現できました。中村恩恵さんらとともに、新しい総合芸術が提案できるかなと思っています」

■ロレーヌ国立バレエ団 トリプルビル
2018年9月21日(金)〜 9月22日(土)サウスホール

橋本裕介(ロームシアター京都/KYOTO EXPERIMENT プログラム・ディレクター)
「ウィリアム・フォーサイス振付の『STEPTEXT』は、1991年、サウスホールのもとである第二ホールでフランクフルト・バレエの日本公演で紹介された作品。レパートリーをどう残せるのか?を考えるとき、1984年に振り付けられたものが30年以上にもわたってレパートリーとしてあり続けていることは、興味深い視点を与えてくれる」

 このほか、クラシック音楽関連では、京都岡崎音楽祭2018 OKAZAKI LOOPSでのタンブッコ・パーカッション・アンサンブル コンサート(6/2、6/24)、作曲家一柳慧が新曲発表とピアノ演奏で登場、原田節(オンド・マルトノ)、劇団地点の三浦基が言葉と音声で参加する『「音楽の現在」音楽、言葉、表現が競い合うコンサート=CONTEMPORARY THEATER』(9/29)などがラインナップされている。

2018年度 自主事業ラインアップパンフレット(PDF)

ロームシアター京都
https://rohmtheatrekyoto.jp/

※(ぶらあぼONLINE https://ebravo.jp/archives/44502 より転載)

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