第31回高松宮殿下記念世界文化賞(主催:公益財団法人日本美術協会)の受賞者合同記者会見、個別懇談会、授賞式典が10月15日、16日オークラ東京、明治記念館で行われた。
今年の受賞者には、アパルトヘイトなどを主題に、木炭とパステルで描いたドローイングを少しずつ描き直しその変化を1コマ毎に撮影、紙の切り抜きや映像のコラージュでアニメーション化する「動くドローイング」を始め、演劇、オペラの演出家、舞台美術家としても活動するウィリアム・ケントリッジや、現代最高のヴァイオリニストの一人、アンネ=ゾフィー・ムターら5人に贈られた。
「高松宮殿下記念世界文化賞」は、日本美術協会の創立100周年を記念し1988年に設立、前総裁高松宮殿下の「世界の文化芸術の普及向上に広く寄与したい」との遺志にもとづき、絵画、彫刻、建築、音楽、演劇・映像の各分野で世界的に顕著な業績をあげた芸術家に毎年授与される。
5部門の受賞者には、それぞれ顕彰メダルと感謝状、賞金1500万円が贈られる。
前列左から)日枝久日本美術協会会長、ランベルト・ディーニ(伊)、クラウス=ディーター・レーマン (独)、クリストファー・パッテン(英)
後列左から)ウィリアム・ケントリッジ、坂東 玉三郎、トッド・ウィリアムズ&ビリー・ツィン
Photo:TERASHI Masahiko第31回高松宮殿下記念世界文化賞
●絵画部門 ウィリアム・ケントリッジ
●彫刻部門 モナ・ハトゥム
●建築部門 トッド・ウィリアムズ&ビリー・ツィン
●音楽部門 アンネ=ゾフィー・ムター
●演劇・映像部門 坂東 玉三郎
ウィリアム・ケントリッジは、「動くドローイング」で独自の世界を拓き、それをオペラなどにも発展させるなど、あらたな表現メディアを創出した。アパルトヘイトや植民地主義などに反対し、その病理に迫ろうとする知的探求が作品群の底流をなしていると、その創作姿勢が高く評価された。
昨年、新国立劇場で上演されたモーツァルトのオペラ《魔笛》は大きな話題となった。「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2019」では10月18日、京都芸術劇場 春秋座でマティアス・ゲルネらによる『冬の旅』を上演、さらにメトロポリタン歌劇場(MET)では2020年1月ベルク《ヴォツェック》を新演出上演、METライブビューイングとして2020年2月28日から3月5日まで日本でも紹介される。
個別懇談会でのウィリアム・ケントリッジ
Photo:TERASHI Masahiko 個別懇談会でケントリッジは「30年間にわたり、すばらしい芸術家が受賞されてきた。そこに並ぶことができて光栄。たとえば18歳のとき、将来このような賞を受けることは考えていなかった。当時、このような賞を受けることが分かっていたら、どれだけワクワクしただろう」と喜びを口にした。
ヨハネスブルグのアトリエにて 2019年
動画『セカンドハンド・リーディング』より 2013年
Film still from Second-hand Reading, 2013
HD video, 7 min
Courtesy of William Kentridge Studio
式典では日枝久日本美術協会会長の挨拶に続き、受賞者を推薦したクリストファー・パッテン(英)、ランベルト・ディーニ(伊)、クラウス=ディーター・レーマン (独)、ジャン=ピエール・ラファラン(仏)の各国際顧問が受賞者の栄誉を称えた。
高松宮殿下記念世界文化賞
http://www.praemiumimperiale.org/